人時生産性と人時売上が無意味な理由

人時生産性、人時売上とは、小売業でよく使われる指標の一つです。

しかし、コレは売上と粗利を改善できる数値ではありません。なぜなら、この数字を改善するには売上と粗利を改善しなければならないからです。

その意味で、売上の責任を負う立場の人にとっては、意味のない数値と言えるでしょう。

人時生産性と人時売上が無意味な理由

人時生産性と人時売上が無意味な理由

人時生産性と人時売上にはどんな意味があるのでしょうか?

実は、これは人を動かすための数値なのです。

それを説明する前に、まずは、人時生産性と人時売上の意味を説明しておきます。

人時生産性とは?

人時生産性とは、従業員一人が1時間でいくら儲けを出しているかを現す数字です。

求め方は次の通り。

人時生産性=粗利÷総労働時間

数値が高いほど一人当たりの粗利が高いことを意味します。

人時売上(高)とは

人時売上とは、従業員一人が1時間でいくら売上を上げているかを現す数字です。

求め方は次の通り。

人時売上=売上÷総労働時間

この数値が高いと言うことは、一人当たりの売上が高いことを意味します。

人時生産性と人時売上の使い方

人時生産性と人時売上は、売上規模が異なる、店や売場を比較するときに使います。

たとえば月4億円売る店と、2億円売る店では、どちらの方が評価されるでしょうか?

普通に考えれば4億円売る店ですが、売上と粗利は規模や立地に大きく左右されます。こんな時、カンタンに計算できて、比較しやすい数値が人時売上と人時生産性です。

例として、あるパソコンショップのパソコン売場とアクセサリー売場、2つの売場を比べてみましょう。

パソコン売場アクセサリー売場
売上265,431千円13,165千円
粗利11,271千円2,964千円

売上、粗利で比べたらパソコン売場の方がいいに決まっています。

次に、人時売上と人時生産性で比べてみましょう。

パソコン売場アクセサリー売場
総労働時間10,800時間1,800時間
人時売上24,576円7,313円
人時生産性1,044円1,646円

人時生産性を比べると、アクセサリー売場がパソコン売場より良いです。

つまり、一人当たりの粗利はアクセサリー売場の方が大きいと言えるわけです。一方、パソコン売場は改善の余地ありとケツを叩くことができます。

このように、人時生産性を指標に使うと、パソコン売場の連中に大きな顔をさせない、アクセサリー売場の連中を腐らせない効果があるわけです。

人時売上と人時生産性は、経営数値や売上に直結する数値ではなく、人を動かすための数値と言えるでしょう。

人時生産性の現実

売場の現実を言うと、この数字は意味がありません。

売場の経費の8割を占めるのは家賃と人件費です。この2つは売上や粗利に対する比率で決まるのではありません。金額はいくらと決まっているのです。

いくら人時生産性が高くても、アクセサリー売場の粗利では家賃も払えないです。

したがって、経費を賄うにはパソコン売場に売れるセールスマンを、あるいは売上を作れるセールスマネージャーを置くのが会社の本音です。

人時生産性も人時売上も、売上には無関係な数字

人時売上と人時生産性は売上に直結する数値ではありません。なぜなら、この数値をどういじくっても、客数は増えないし、客単価も上がらないからです。

私たちが管理すべき数値は、改善したら客数が増えるか、客単価が上がる数字でなければならないのです。これ以外の数値は意味がありません。

あなたが売上の責任を負う立場なら、人時売上と人時生産性は今スグ忘れて大丈夫です。もっと売上に直結する数値を追いかけてください。

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